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学術変革領域研究(A)の公募研究の内容

イオン流の非平衡性と集団運動の理解による材料デザイン変革

領域略称名:イオン渋滞学
領域番号:24A201
設定期間:令和6(2024)年度~令和10(2028)年度
領域代表者:一杉 太郎
所属機関:東京大学大学院理学系研究科

① 領域の概要

イオン渋滞学とは、固体中でイオンが集団的に運動する現象を解明し、イオン流を自在に制御した新材料を創製するための学問である。本研究領域では、材料科学と数理科学の研究者が協働してイオン渋滞を制御するための物質設計指針を構築する。さらに、材料や理論のモデリングから生まれる新しい課題を通じ、数理科学の発展に寄与する。本領域研究を通して、カーボンニュートラル社会の構築に不可欠な固体イオニクス・電池材料や触媒材料、水素貯蔵材料の高性能化に貢献する。

数理科学の一例として渋滞学に着目する。非対称単純排除過程(ASEP)やセルオートマトンを活用した数理をはじめ、粒子間の相互作用をモデリング可能な数理を活用する。またジャミング転移等非平衡統計物理による材料の理解を試み、材料科学の諸分野に至るまで広く数理科学の適用を進める。その第一歩が、固体イオニクス・電池材料や触媒材料、水素貯蔵材料に関わる科学との融合である。

その融合を促進するために、下記に示す三つの融合プロジェクトを推進する。このプロジェクトでは計画研究A01、A02、A03の垣根を越え、相互の理解と新学術の創成を進める。

【① イオン集団の流れ(ミクロ-メソ領域)】

結晶格子スケールでのイオンの集団運動を単結晶材料モデル材料で実験的に検証し、数理モデルにフィードバックする。それにより、理論をブラッシュアップする。

【② 経路ネットワーク(メソ-マクロ領域)】

より広い空間スケールについて、分子動力学法動的モンテカルロ法を利用して集団運動を詳細に解析する。実験では、高度な合成技術を用いて新材料を合成し、イオン流制御を行う。そして、先端計測技術によりイオン渋滞現象を定量的に解明する。

【③ 全体最適(ミクロ-メソ-マクロ領域)】

マクロスケールでの物性発現を目指し、粒界・界面設計複合材料(結晶材料と非結晶材料等の混合体)の最適化を通じ、ミクロ-メソ-マクロをつなぐ。

 

② 公募する内容、公募研究への期待等

 

以下に関わる公募研究を期待する。

A01・計算∙数理【核心的な問い:イオン渋滞を制御するための物理・数理とは?】

触媒反応やイオニクス、メソ・マクロな非平衡系等を対象とした材料シミュレーション、グラフ理論/離散幾何学、統計的機械学習、確率過程、アクティブマター等に代表される数理科学のイオン流への応用研究。材料科学に興味を持つ多くの数理科学者の参画を強く望んでいる。

A02・材料創製【核心的な問い: イオン渋滞の支配因子を制御する材料合成とは?】

(a) 精緻な物性値と構造情報を獲得するためのモデル材料合成、(b) イオン流を能動的に制御した電池、固体触媒、水素貯蔵材料の創製と新合成法の開拓、(c) バルク、表面・界面などの階層構造を制御した複合材料の開発

A03・先端計測【核心的な問い: イオン渋滞を決定づける支配因子とは?】

イオン伝導体、電池材料、固体触媒、水素貯蔵材料などを対象とした、(a) イオン、電子、格子の相互作用を明らかにするためのオペランド計測技術の開発、(b) 計画研究を補完する計測技術の開発(マルチモーダル化)、(c) 新しい研究開発の進め方を実現する計測・解析基盤の構築。

 

共同研究を積極的に推進する提案を期待する。また、新領域の開拓に熱意を持つ若手研究者の応募を歓迎する。

 

③ 公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数

研究項目番号研究項目名応募上限額(単年度当たり)採択目安件数
A01 イオン渋滞学の構築に向けた数理・計算シミュレーション解析 300万円 5件
A02 イオン渋滞学に基づく新物質創製と機能開拓 400万円 5件
A03 イオン渋滞現象の解明に向けた高度計測技術の統合利用 400万円 5件
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